社内資料をAIで探せる仕組みの作り方
社内資料をAIで探せるようにするには、いきなり全部のデータをAIに渡すのではなく、①キーワードで状況に応じて当てる検索、②意味が近いものをあいまいに拾う検索、③自然文で質問すると答えてくれる生成AI、の3段階を順番に積み上げます。私はこの設計を自社プロダクトNiraiCardの「聞く」秘書機能で実際に固めました。一気に作らないことが、結果的に一番早く安全に着地する道です。
なぜ一気に全部をAIに渡してはいけないのか
社内資料をAIに検索させたいと考えたとき、多くの方が「全部の資料を読み込ませればいい」と考えます。私も最初はそう思っていました。ですが実際に設計を進めると、そこには2つの壁があります。
1つ目は、コストの壁です。生成AIに文章を読ませて答えを作らせる処理は、検索だけの処理より重く、使えば使うだけ費用がかかります。上限を決めずに動かすと、想定外の使われ方をされたときに費用が積み上がります。
2つ目は、情報漏えいの壁です。社内資料には、顧客の連絡先や取引条件など、本人以外に見せてはいけない情報が混ざっていることがほとんどです。AIに渡すコンテキスト(AIが回答を作る際に読む材料)に、そうした項目をそのまま載せてしまうと、意図しない相手に情報が渡るリスクが生まれます。
だから私は、検索を一気に「賢く」しようとせず、段階を分けて設計しました。
具体例:NiraiCardの「聞く」秘書機能で実際にやったこと
うちのNiraiCardには、名刺データに向かって話しかけると答えてくれる「聞く」秘書という機能があります。2026年7月12日に、この機能を3段階で作る設計を固めました。
| 段階 | やること | 特徴 |
|---|---|---|
| 1. キーワード検索 | 名前や会社名で状況に応じて一致するものを探す | 費用が低く、すぐ動く |
| 2. あいまい検索 | 言葉が完全一致しなくても、意味が近いものを拾う | キーワード検索で外れたときだけ動く |
| 3. 自然文で回答する生成AI | 「先月ダイビングの話をした人は?」のような聞き方に、文章で答える | 一番コストが高いので、有料の上位機能として切り分けた |
さらに、検索の対象(コーパス)も一度に全部は広げず、名刺→会議の履歴→メモや資料、という順番で使う範囲を少しずつ広げる設計にしました。会議の履歴のように個人の予定に関わる情報は、本人が「使ってよい」と同意(オプトイン)した場合だけ検索対象に加えます。
個人情報の扱いについても、私は次の2つを設計段階で決めています。
- 暗号化してある項目(電話番号など)は、生成AIが答えを作るための材料には一切載せない
- 検索結果や回答は、必ずその情報の持ち主本人にだけ返す。第三者への一斉送信のような使い方は作らない
そして費用については、1人あたりの利用回数の上限と、月ごとの予算の上限を先に決め、上限に達したら自動的に機能を止める仕組みを組み込みました。止めても、キーワード検索とあいまい検索は無料の範囲で残り続けるので、生成AIの部分だけを止めればサービス自体は動き続けます。この「旗ひとつで止められる」形にしておくことを、私は設計の一番最初の条件にしました。
今すぐできる一歩
自社で社内資料をAIで探せるようにしたいと思ったら、いきなりツールを探す前に、次の3つを紙に書き出してみてください。
- 検索させたい資料は何か(マニュアル、Q&A、過去の見積もり、顧客とのやり取りなど)
- その中に、本人以外に見せてはいけない情報がどれだけ混ざっているか
- まず一番検索したい資料はどれか(全部同時に始めない)
この3つが整理できると、キーワード検索だけで足りるのか、生成AIまで必要なのかの判断がつきます。私がNiraiCardで最初にキーワード検索から始めたのも、同じ理由です。
まとめ
- 社内資料をAIで探せるようにするには、キーワード検索→あいまい検索→自然文で答える生成AIの順に段階を積む
- 生成AIに渡す材料からは、個人情報や機密情報を最初から外す設計にする
- 費用は上限を先に決め、止められる仕組みを作ってから動かす
自社の資料をどこから検索できるようにすればいいか、順番が見えないという方は、まず30分、今の仕事の流れを一緒に整理するところから始めましょう。何を検索対象にすべきかは、業務の流れを見ないと決められません。でーじ悩んでから始めるより、話しながら整理したほうが早いです。
