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自社専用の小さなシステムはAIで作れるか

結論:自社専用の小さなシステムはAIで作れます

作れます。ただし大掛かりなプログラムを組むという意味ではありません。私が言う「システム」とは、経営者の頭の中にある価値観や判断基準を、誰でも繰り返し使える形(チェックリストや台本)に翻訳したものです。私は黒田如水の水五訓という古い教えを、糸満マリンセンターとシートラベラーが展開する「天然水族感」の現場判断に翻訳する作業をAIと一緒に行いました。この記事では、その進め方と、途中でつまずいた点、今日から試せる手順までをお伝えします。

なぜ古典の教えがシステムの土台になるのか

水五訓は、自ら動いて他を動かす、障害にあうほど勢いを増す、清濁併せ容れる、といった五つの短い条文です。経営者の講話や社内研修の題材として使われることが多いのですが、そのまま読むだけでは現場の判断には直結しません。「自ら潔うして他の汚れを洗い清濁併せ容るる」は美しい言葉ですが、これを「今日、初対面のお客様にどう接するか」という行動に落とし込まないと、現場では使いようがないのです。

ここでAIが役に立ちます。AIは、抽象的な言葉を「では具体的にはどういう行動か」と問い返す作業が得意です。私はこの問いかけを、条文を一つ読んでは「これは現場のどの場面の話か」とAIに尋ね、出てきた候補を自分の経験と照らして採用するかどうかを判断する、という往復作業として行いました。五つの条文すべてで、この往復を繰り返しました。

一度で正解が出ることはほとんどありません。例えば「常に己の進路を求めて止まざるは水なり」は、最初は「スタッフが常に学び続ける」という抽象的な言葉にしかなりませんでした。これでは現場の行動になりません。そこでAIに「学び続けるとは具体的に何をすることか」と重ねて尋ね、「安全・安心・感動の設計を継続的に見直すこと」という形に絞り込みました。翻訳がうまくいかないときは、候補を一度捨てて、別の角度から問い直す。この繰り返しが、言葉を現場に届く形にする作業だと私は考えています。

候補を捨てるかどうかの基準は、私の中では一つだけです。「この言葉を読んで、スタッフが今日やる行動を一つ思い浮かべられるか」。思い浮かべられない案は、どんなに美しい言葉でも採用しません。逆に、地味でも「朝、海況を見る時にここまで確認する」のように具体的な動作が浮かぶ案は、多少表現が粗くても残します。AIに「もっと具体的に」と重ねて尋ねるのは、この基準に届くまでの作業です。

「自社専用の小さなシステム」という言葉を聞くと、予約システムや顧客管理ソフトのような大きなものを想像しがちです。しかし現場で実際に困っているのは、むしろ「スタッフによって接客の質がばらつく」「何を優先すべきか迷う」といった、判断基準が言語化されていないことから来る問題です。これは高価なソフトではなく、言葉を整理したチェックリストや台本で解決できます。AIは、この言語化の壁打ち相手として機能します。

天然水族感ではどう翻訳したか

私は水五訓の五条文を、天然水族感の現場に次のように当てはめました。

水五訓の条文天然水族感での翻訳
自ら活動して他を動かしむるは水なりガイドがまず笑顔になる
常に己の進路を求めて止まざるは水なり安全・安心・感動の設計を継続的に見直す
障害にあい激しくその勢力を百倍し得るは水なり初心者の不安を笑顔に変える
自ら潔うして他の汚れを洗い清濁併せ容るるは水なりお客様のどんな感情も受け止める
洋々として大海を満たし…性を失わざるお客様それぞれの形で楽しんでもらう

この表自体は、私が社内研修やSNS投稿で使えるようにAIと一緒に整理したものです。条文を読んだだけでは「いい話だな」で終わってしまいますが、右側の列まで書き出すと、スタッフに「今日は何を優先するか」を渡せる形になります。

天然水族感では、泳げない人・海に不安がある人を専門にした体験設計をしています。ここで大事なのは、「不安→安心→ワクワク→没入→感動→余韻」という感情の流れを、接客の全場面で意識することです。この流れ自体も、最初から整理されていたわけではありません。現場で何となく分かっていたことを、言葉の段階に区切って書き出す作業をAIと一緒に行いました。水五訓の「障害にあい激しくその勢力を百倍し得る」は、まさにこの「不安」の段階をどう扱うかという話に直結します。お客様が持ってきた不安を障害として退けるのではなく、それを乗り越えたときの感動に変える、という設計の軸になっています。

感情の段階と水五訓の条文を並べて初めて気づいたことがあります。それは、五つの条文がどれも「不安の段階」だけを指しているわけではなく、感情の流れ全体に対応しているということです。「自ら活動して他を動かしむる」はガイドが笑顔になる瞬間なので「安心」の段階に効きます。「洋々として大海を満たし性を失わざる」は、お客様それぞれの楽しみ方を受け止める話なので「没入」から「感動」にかけての段階に効きます。条文と感情の段階を一対一で対応させようとすると無理が出ますが、全体を重ねて眺めると、古典の言葉が現場の設計全体を支える土台になっていることが見えてきました。これは翻訳作業を一度で終わらせず、五条文すべてを並べてから見直したからこそ気づけたことです。

同じように、安全対策の項目を一つずつ書き出す作業も行いました。場所の選定、海況判断、器材の確認、子ども専用の浮き具、AEDの常備など、現場で当たり前にやっていることを言葉にして並べると、二十項目以上になります。これは「事故が起きてから対応する」のではなく、「事故が起きないように設計する」という考え方を言葉にしたものです。水五訓の「自ら潔うして他の汚れを洗い清濁併せ容るる」を私なりに読み替えると、お客様のどんな状態(泳げない・怖い・体力がない)も受け止めた上で、安全に楽しんでもらう仕組みを作る、という意味になります。

スタッフ教育についても、AIと人の役割分担を言葉にしました。AIに任せられるのは、予約情報の整理や当日の海況チェックのような「海のレーダー」役です。人にしかできないのは、お客様の表情や声のトーンを読み取る「灯台」役です。この役割分担をどう決めたかというと、判断の基準は一つです。「数字やパターンで判断できることはAI」「その場の空気や感情を読むことは人」という線引きです。海況チェックは数字(風・波・潮位)で判断できるのでAIに任せられますが、お客様が本当に不安がっているのか、それとも照れ隠しで笑っているのかは、数字では分かりません。この線引きを言葉にしておくと、新しく入ったスタッフにも「AIに何を任せて、自分は何をすべきか」がすぐに伝わります。AIに丸投げするのではなく、AIが拾える領域と人にしか拾えない領域を先に分けておくこと自体が、一つの仕組みだと私は考えています。

こうした一つひとつの言語化作業は、派手なシステム開発ではありません。古典の条文、現場の感情設計、安全対策、役割分担、それぞれをAIとの対話を通じて書き出し、表やリストの形に整えただけです。それでも、これは立派な「自社専用の小さな仕組み」です。誰かに伝えられる形になっているかどうかが、仕組みと単なる思いつきの違いだと私は考えています。

今すぐできる一歩

自社専用の仕組みを作るのに、特別なツールは要りません。今日からできる手順は次の三つです。

一つ目は、自社が大事にしている価値観を一言で書き出すことです。創業のときの想い、譲れない基準、何でも構いません。水五訓のような古典でなくても、自分の言葉で十分です。もし一言が複数思い浮かんでしまう場合は、絞り込もうとせず、全部書き出してから「お客様に一番よく聞かれる場面はどれか」で優先順位をつけてみてください。現場で一番使う頻度が高い価値観から着手するほうが、後の作業が早く形になります。

二つ目は、その一言を五つくらいの現場行動に分解してみることです。「お客様第一」という言葉なら、「問い合わせへの返信は当日中にする」「不安そうな方には先に説明する」のように、具体的な行動まで落とし込みます。ここでAIに「この価値観を現場の行動に翻訳して」と相談し、出てきた案をそのまま使うのではなく、「これは本当に現場で起きていることか」と自分で一つずつ検証してみてください。合わない案は捨てて構いません。捨てる基準は、前述の通り「スタッフが今日やる行動を一つ思い浮かべられるか」です。思い浮かべられなければ、同じ価値観についてもう一段具体的に尋ね直してください。

三つ目は、分解した行動をチェックリストか台本の形にして、スタッフと共有することです。紙一枚でも構いません。言葉にして渡せる時点で、それはもう「自社専用の小さなシステム」です。共有した後に「使いづらい」という声が出たら、それは失敗ではなく、仕組みを見直す材料です。水五訓の条文自体が「止まざる」ことを説いているように、一度作って終わりにせず、現場の声で更新し続けるものだと考えてください。

もし「何から手をつければいいか分からない」という段階であれば、まずは自社の仕事の流れを一度整理してみることをお勧めします。私はニライデスクで、こうした仕組み作りの相談を受けています。今の仕事の流れのどこから手をつけるべきかを一緒に整理することができます。

よくある質問

Q. 水五訓のような古典でなくても良いですか。 はい。古典である必要はありません。自分の事業で大事にしていることを一言にできれば、それを翻訳の出発点にできます。水五訓はあくまで私が使った題材の一つです。

Q. 高額なシステム開発をしないと「自社専用」とは呼べませんか。 そうは思いません。私が天然水族感で作ったのは、条文の翻訳表、感情設計の段階図、安全対策のリストといった、言葉で整理したものです。これらは専用のソフトではありませんが、現場で繰り返し使える点で立派な仕組みです。

Q. AIが出した翻訳案が現場に合わないときはどうすればいいですか。 捨てて構いません。私の経験でも、一度で現場に合う言葉が出てくることの方が少なかったです。AIに「もっと具体的にすると」「別の角度で言うと」と重ねて尋ね、自分の経験と照らして合うものだけを残す、という往復を前提にしてください。

Q. スタッフによって価値観の受け止め方が違う場合はどうすればいいですか。 翻訳した行動を一度全員に見せて、「これで今日の判断基準として伝わるか」を聞いてみてください。伝わらない部分があれば、その箇所だけをもう一段具体的な言葉に直します。全員に同じ解釈を強制するのではなく、行動として共有できる最小限の形まで言葉を削ぎ落とすのがこの作業の目的です。

Q. 一度作った表は、そのままずっと使えますか。 水五訓の条文自体が「常に己の進路を求めて止まざるは水なり」と言っているように、仕組みも固定したままでは古くなります。現場でやりづらさを感じたら、その都度AIと一緒に言葉を見直すものだと考えています。

まとめ

  • 自社専用の小さなシステムは、大掛かりな開発ではなく、価値観を現場行動に翻訳する作業から始まります。
  • 私は水五訓の五条文を、天然水族感の安全対策や感情設計、スタッフの役割分担に翻訳し、言葉として整理しました。翻訳がうまくいかないときは、候補を出しては現場と照らして絞り込む往復作業が必要です。
  • まずは自社の価値観を一言にして、それを五つの現場行動に分解するところから始めてみてください。

古典の言葉も、現場の思いも、言語化されなければ次の人に伝わりません。AIはその翻訳作業の壁打ち相手として使えます。でーじ難しく考えず、まずは一言を書き出すところから始めてみてください。

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#AI活用#経営フレーム#天然水族感

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