キャラクターの声がぶれる悩みの直し方
この仕事を、売上や工数の仕組みとしてどう見直せばいいか。私の答えは、毎回ゼロからキャラクターを考え直すのをやめて、声とトーンのルールを一枚にまとめた「声の設計図」を先に作ることです。沖縄ビジネスAIラボ代表の相川浩一です。現場で使う天然水族感シリーズでは、キャラクターの語尾や舞台設定を固定するルールを決めています。これは写真や動画をAIで作る作業に限らず、現場の仕事を仕組みとして見直すときの考え方そのものです。
なぜ「毎回ゼロから作る」は仕事を重くするのか
AIで動画や画像を作るとき、キャラクターの性格や話し方、衣装や舞台をその都度考え直すと、毎回「このキャラは前回と同じに見えるか」を確認する手間が発生します。動画生成AIの指示文は、テーマ・スタイル・登場人物・シーン展開・カメラワーク・音声・雰囲気といった項目を分けて書く型が基本になりますが、この「登場人物」の部分を毎回新しく考えていると、企画のたびにキャラクターの印象が変わってしまいます。しかも生成AIは、見た目だけで言えば似たキャラクターを量産しがちで、構図や表情、色味が生成のたびに微妙にずれていきます。見る側からすれば、口調や雰囲気が毎回違うキャラクターは「前にも見た顔」として記憶に残りません。これはシリーズとして積み上がらない、つまり毎回が単発企画になってしまうということです。
これは動画や画像の制作だけの話ではありません。観光・体験・宿泊・飲食・サロンのような現場でも、接客の説明や予約対応の言葉遣いが担当者ごと・タイミングごとにばらついていれば、お客様から見て「いつもと違う店」に見えてしまいます。仕組みとして見直すべきは、作業量そのものよりも先に「毎回変えていい部分」と「変えない部分」を分けることだと、私は考えています。これを先に決めておかないと、ツールが変わるたびに、担当者が変わるたびに、キャラクターや対応の印象がぶれ続けます。
天然水族感シリーズで固定した「声の設計図」
私は、自社ツアーブランドである天然水族感シリーズの動画・画像を作るとき、登場するキャラクターの話し方を先に固定しています。
- クマノミのキャラクターは語尾を「〜さー」に固定し、明るく可愛いトーンで話す
- ウミガメのキャラクターは語尾を「〜くお」に固定し、のんびりした低めのトーンで話す
- 私自身(おーしゃん)は渋く軽やかなトーンで、伴走者のポジションを崩さない
舞台も糸満の大度海岸(通称ジョン万ビーチ)に固定し、私の衣装は黒いウェットスーツにサングラス、天然水族感のロゴという組み合わせを定番にしています。ハロウィン版、ヒーロー版、ラップ版、探偵アニメ風のパロディ版など、企画のテーマ自体は二〇二五年十月ごろから何度も変えてきましたが、この語尾とトーン、舞台と衣装だけは変えていません。
企画のテーマは、見ている人に馴染みのある番組フォーマットを借りることが多くあります。
| ジャンル | 借りる番組の雰囲気 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 感動・情熱系 | 情熱大陸風 | ガイドの生き様・哲学を描く |
| バラエティ | 探偵ナイトスクープ風 | 軽妙トーク・ロケ笑い |
| 旅・情報 | 世界ふしぎ発見風 | ミステリー仕立て |
| 通販 | ジャパネット風 | 価格訴求・申込導線の明示 |
| 海外映画 | パイレーツ・オブ・カリビアン風 | 冒険コスプレ企画 |
| アニメ | 未来少年コナン風 | 冒険ストーリー |
フォーマットを変えるたびに、画面の雰囲気も衣装のアレンジも変わりますが、クマノミとウミガメの語尾だけは毎回同じにしています。これは「企画は自由に変えてよい、ただし声は変えない」という線引きを先に決めているからです。
これを私は一枚のルール表として持っておき、動画生成AI向けの指示文(Sora二やVEO三で使う構造化プロンプトやYAML形式の指示)を作るたびに、この表を土台として参照しています。この指示文は上段と下段の二層構造にしていて、上段はテーマ・スタイル・登場人物・シーン展開・カメラワーク・音声・雰囲気を分けて書く構造化プロンプト、下段は秒数ごとのカット割りを決めるショットリストです。このうち「登場人物」の語尾とトーンの指定だけは、企画のアイデアが変わっても書き直しません。これを「Voice Bible」と呼んでいます。
声を固定すると何が変わるのか
見た目のディテールを毎回完全に揃えるのは、今の生成AIでは簡単ではありません。構図や色味、表情は生成するたびに微妙に変わります。位置やポーズを固定するための指示文を細かく、繰り返し書き込む工夫もありますが、それでも細部まで寸分違わず揃えることは難しいのが実情です。そこで私が判断したのは、「見た目の再現性」を完璧に追いかけるより、「話し方」という聴覚的な手がかりを固定するほうが、キャラクターとしての一貫性を保ちやすいということでした。クマノミは「さー」、ウミガメは「くお」と語尾が決まっていれば、多少絵がぶれていても、見ている人には同じキャラクターだと伝わります。
もう一つ分かったのは、テーマやパロディ先の番組が変わっても、語尾とトーンだけは変えないという制約を自分で先に決めておくと、どのAIツールを使っても、誰が指示文を書いても、同じキャラクターとして扱えるということです。これは逆に言えば、変えない部分を決めていなければ、ツールや担当が変わるたびにキャラクターがぶれる、ということでもあります。仕組みというのは、自由度を広げることではなく、変えない部分を先に決めて、そこだけは誰がやっても同じになるようにしておくことだと、私はこの作業を通じて考えるようになりました。
これは接客の現場にも同じ構造で当てはまります。説明の言い回しや挨拶の文言を毎回新しく考える必要はありません。むしろ「この一言だけは誰が対応しても同じにする」という部分を先に決めておけば、担当者が変わっても、お客様から見た印象のブレは小さくなります。声の設計図は、見た目や言葉のすべてを統一するためのものではなく、「ここだけは崩さない」という最小限のルールを決めるためのものだと、私は捉えています。
今すぐできる一歩
自分の現場で「声の設計図」を作るなら、次の手順が現実的です。
一. 登場させる人物・キャラクターを洗い出す(スタッフ、マスコット、経営者自身など) 二. それぞれの話し方・口癖・トーンを一言で決める(例:語尾、敬語の度合い、テンポ) 三. 舞台・衣装・小道具など、企画が変わっても変えない要素を決める 四. テーマや企画は変わっても、この一枚のルールだけは変えないと決める 五. AIに指示を出すときも、スタッフに説明するときも、この一枚を毎回土台にする
一枚にまとめる作業自体は難しいものではありません。難しいのは「何を変えないか」を先に決める判断の部分です。ここは経営者自身が決めるしかありません。迷ったときは、まず一人のキャラクター(あるいは一つの接客場面)だけに絞って、語尾かトーンのどちらか一つだけを固定してみることをおすすめします。欲張って全部を一度に決めようとすると、ルール自体が複雑になり、結局誰も守らなくなります。
もし途中で「このキャラは語尾を変えたほうが企画に合う」と迷う場面が出てきたら、変えていいのは企画のテーマや舞台のほうだと先に決めておくと判断に迷いません。語尾やトーンを企画に合わせて動かし始めると、ルールが一枚ではなく企画ごとに増えていき、結局「何が正解か分からない」状態に戻ってしまいます。困ったときほど、声の設計図を見直すのではなく、企画側を調整するのが筋だと私は考えています。
よくある質問
Q. キャラクターが複数いる場合、声をどう区別すればいいですか。 語尾やトーンなど、聞けば区別できる要素を一つずつ割り当てます。天然水族感シリーズではクマノミとウミガメで語尾を変えて、見た目が多少ぶれても聞けば分かるようにしています。区別する要素は一つで十分です。語尾とトーンの両方を一度に変えようとすると、かえって覚えにくくなります。
Q. テーマや企画ごとに雰囲気を変えたいのですが、声も変えていいですか。 企画の雰囲気自体は変えてかまいませんが、語尾とトーンだけは変えないルールにしています。ハロウィン版やヒーロー版、通販番組風のパロディ企画でも語尾を固定することで、シリーズとして同じキャラクターだと認識してもらえます。企画の見た目を変えることと、キャラクターの声を変えることは、分けて考えるべきだと私は判断しています。
Q. 見た目のブレはどこまで気にすればいいですか。 生成のたびに構図や表情が変わること自体は、今の生成AIでは避けにくいと考えています。私は見た目のブレをゼロにしようとするより、声という手がかりを固定することで、見ている人が「同じキャラクターだ」と認識できる状態を優先しました。すべてを完璧に揃えようとせず、何を優先して固定するかを先に決めることが大切です。
Q. 語尾やトーンを決めても、見た目のブレ対策はしなくていいのですか。 声の固定を優先しているとはいえ、見た目の指示を諦めているわけではありません。位置やポーズを固定したいときは「動かさない」「余計な背景を足さない」といった指示を繰り返し書き込み、逆に避けたい動きや変形は禁止事項としてはっきり書いておくと、ブレの幅は小さくなります。ただし、これをどれだけ細かく書いても完全に揃うわけではないので、最終的に頼る軸は声のほうだと私は考えています。
Q. この考え方は動画や画像制作以外にも使えますか。 使えると考えています。現場の接客トークや予約対応の言葉遣いも、人によってばらつくと、お客様から見て「いつもと違う店」に見えてしまいます。声の設計図は制作物だけでなく、人が担う仕事にも応用できる考え方です。全部のトークを統一しようとせず、挨拶の一言や説明の決め台詞など、変えない部分を一つに絞るところから始めるのが現実的です。
まとめ
- 毎回ゼロからキャラクターを考えるのをやめ、声とトーンを一枚のルールにまとめる
- 見た目が多少ぶれても、語尾やトーンを固定すれば同じキャラクターとして認識してもらえる
- テーマが変わっても変えない部分を先に決めておくと、誰が作っても仕組みとして回る
自分の現場では何を「変えない部分」に決めればいいか、迷う経営者の方は多いはずです。仕事の流れとあわせて整理することもできますので、気になる方はお問い合わせください。でーじ迷う部分こそ、まずは一枚のルールから始めてみてください。
