考え方

なぜ三社比較で自社の役割が見えるのか

この仕事を売上や工数の仕組みとして見直すには、自社と性格の異なる二つの比較先を並べ、それぞれの強み(USP=他にはない売りの理由)を四つに分けて書き出すことから始めます。同じ土俵で張り合う発想をやめ、「誰に選ばれる役割か」を先に決めると、集客の導線と接客に使う工数の配分が自然に決まります。私はこの三社比較の考え方を、沖縄ビジネスAIラボで事業の整理に使っています。

なぜ三社比較で仕組みが見直せるのか

売上や工数の悩みは、たいてい「全部のお客様に、全部の魅力で応えよう」としているところから生まれます。問い合わせが来れば断らずに受け、メニューを増やし、対応範囲を広げる。その結果、現場は忙しいのに利益が薄く、スタッフの対応も毎回ばらつく、という状態になりがちです。

ここで役に立つのが、ポジショニング(お客様の頭の中にできるイメージ)と差別化(選ばれる理由)を分けて考える、というマーケティングの基本の型です。順番は、先にポジショニングを決め、後から差別化を考えるという流れになります。この順番を逆にして、ポジショニングを決めないまま差別化だけを語ると、強みの説明が長くなり、結局「何でもできます」という印象になってしまいます。お客様の頭の中では、カテゴリーが同じに見えた時点で比較は価格だけに向かいやすくなるため、ここでつまずくと値引き競争から抜けられなくなります。

差別化、つまりUSPには、大きく分けて四つの種類があります。

USPの種類内容役割
ユニークベネフィットUSP他にはない独自の価値最も強い旗になる
リーズンUSPなぜその価値があると言えるかの根拠信頼の裏付け
オーソリティーUSP実績・資格・権威づけ安心材料
エクストラUSP値段や見た目など付随的な価値あると嬉しい部分

この四分類で自社と比較先を埋めていくと、「同じに見えていた強み」が、実は根拠(リーズン)の違いだったり、付随価値(エクストラ)の差でしかなかったりすることが見えてきます。たとえば「安心・安全」という言葉は、どのお店も使いがちですが、それが現場の工夫による根拠なのか、資格や実績による裏付けなのか、それとも単に見た目や設備の印象なのかで、伝え方も、どこに力を入れて説明すべきかもまったく変わります。ここまで分解すると、無理に競合と同じ土俵で戦う必要がないことが分かります。競合として戦うのではなく、用途別で選ばれる設計に切り替える。これが、売上と工数の両方を同時に整えるための考え方です。

もう一つ押さえておきたいのが、カテゴリーキーワード(一秒で価値が伝わる一言)という考え方です。自社の強みを長く説明しないと伝わらない状態は、まだ役割が定まっていないサインだと私は捉えています。三社を比較して役割を分けたら、それぞれの窓口を一言で言い切れるかどうかを確認してみてください。言い切れないうちは、まだ整理が途中です。

自社の三つの窓口で役割を分けて考える

私は、自社で運営している天然水族感(初心者・泳げない方向けの体験)、シートラベラー、糸満マリンセンターという三つの窓口を並べて、役割の違いを整理するようにしています。

三つを比べる際に使っているのが、前段の四分類です。

  • 天然水族感は、泳げない人や三世代での利用という条件に絞った「ユニークベネフィット」を軸にしています。誰でも歓迎ではなく、対象を絞ることで価値が立つという考え方です。
  • シートラベラーは、観光のしやすさ・利便性という「エクストラ」寄りの価値が軸になります。
  • 糸満マリンセンターは、地元での認知や実績という「オーソリティー」寄りの価値が軸になります。

この三つを同じ土俵で比較しようとすると、「どれも海の体験」という一点で競合してしまいます。しかし、お客様が何に困っていて、どの段階で問い合わせてくるかで役割を分けると、問い合わせの振り分けも接客の準備も迷わなくなります。たとえば「観光のついでに手軽に」という相談と、「泳げないので不安」という相談は、同じ海のサービスでも答え方がまったく違います。窓口ごとに想定する悩みを先に決めておくことで、現場が毎回ゼロから説明し直す手間が減ります。

実際に整理をしていると、二つの窓口で「安心して楽しめる」という同じ言葉を使っていることに気づく場面があります。このとき私が確認するのは、その言葉が四分類のどこに属するかです。片方は対象を絞ったことで生まれる独自の価値(ユニークベネフィット)であり、もう片方は根拠や実績(リーズン・オーソリティー)止まりである、と切り分けられれば、表現を変えずとも役割の違いは保てます。逆に、どちらも根拠止まりでしかないと分かったときは、どちらかの窓口の説明文を見直す合図だと判断しています。

ポジショニングマップ(縦軸と横軸の二軸で自社と比較先の位置を図にするもの)を使うときも、軸の選び方がポイントです。「価格×体験価値」「安全性×感動」など、業種に合わせて二軸を変えて何パターンか試してみると、どの軸で見ても重なってしまう部分と、自社だけが離れている部分がはっきり分かります。重なっている部分は競合しても勝ちにくい領域、離れている部分が本来の強みです。一つの軸だけで判断して「うちは強みがない」と結論づけるのは早計で、軸を変えると見える景色はかなり変わります。私は最低でも二、三パターンの軸を試すようにしています。

今すぐできる一歩

机上の分析で終わらせず、紙一枚か表計算のシート一枚で構わないので、次の手順で書き出してみることをお勧めします。

一. 自社と、性格の異なる二つの比較先を決める(例:観光客向けに強いところ、地元での信頼が厚いところ)。比較先が思い浮かばない場合は、他社である必要はありません。自社のメニューや客層の違いを「窓口」と見立てて代用できます。

二. それぞれのUSPを「ユニークベネフィット」「リーズン」「オーソリティー」「エクストラ」の四つの欄に書き出す。一つの窓口に複数のUSPが出てきても構いません。むしろ複数出た方が、後の整理で使い分けがしやすくなります。

三. 二軸を変えながらポジショニングマップを二、三パターン描いてみる。一回目で「強みがない」と感じても、軸を変えて描き直してみてください。

四. 「どんなお客様の、どんな悩みに応える窓口か」を一文で言い切る。長い説明になってしまう場合は、まだポジショニングが決まり切っていないサインです。短く言い切れるまで削ってみてください。

五. その一文を、予約ページの一行目と、電話・問い合わせ対応時の最初の一言に反映する。反映した後も、お客様からの質問の内容が変わらないようであれば、一文の表現を見直す目安にしてください。

ここまでやると、広告や投稿のたびに言うことが変わる、という状態から抜け出せます。窓口の役割が決まっていれば、スタッフが毎回判断に迷う場面も減り、対応にかかる時間のばらつきも小さくなります。

よくある質問

Q. 比較先が多すぎて、三社に絞れません。

A. 業態の型で分類すると絞りやすくなります。観光客向けの利便性で強いところ、地元での信頼・実績で強いところ、という二つの型のどちらかに、周りの比較先を当てはめてみてください。型が同じ比較先が複数あっても、代表的な一つを選べば十分です。

Q. ポジショニングと差別化、どちらから先に決めるべきですか。

A. 先にポジショニング、後から差別化という順番をお勧めします。差別化の言葉から考え始めると、良さそうな表現がいくつも出てきて、結局「何でもできます」という説明に戻りがちです。まずお客様の頭の中にどんなイメージを作りたいかを決めてから、そのイメージを裏付ける差別化の言葉を選ぶと、説明が散らかりません。

Q. USPを書き出したら、比較先と内容が重なってしまいました。

A. 重なった部分は、他にはない独自の価値である「ユニークベネフィットUSP」ではなく、「アドバンテージUSP」止まりだと判断してください。そのうえで、重ならない根拠(リーズン)や実績(オーソリティー)を探し直すと、本来の強みが見つかりやすくなります。重なりに気づいたこと自体が収穫で、そのまま同じ言葉を使い続けるよりも、どちらかの説明文を見直す良いタイミングです。

Q. ポジショニングマップの軸はどう決めればいいですか。

A. 業種によって有効な軸は変わります。価格と体験価値、安全性と感動、利便性と専門性など、複数の組み合わせを試してみて、自社だけが離れた位置に来る軸を探すのがコツです。一つの軸だけで判断せず、何パターンか描いてみてください。

Q. 役割を決めた後、お客様からの問い合わせ内容がまだ混ざって来ます。どうすればいいですか。

A. 窓口を分けても、お客様が最初に見る媒体(検索結果やSNS)の時点で情報が混ざっていると、問い合わせも混ざったまま届きます。まずは手順四で作った一文を、予約ページの一行目だけでなく、各媒体のプロフィールや投稿の冒頭にも揃えて置いてみてください。入口の時点で役割が伝わっていれば、問い合わせの内容も自然に整理されてきます。

まとめ

  • 売上と工数の仕組みを見直す第一歩は、自社と性格の異なる二つの比較先を並べて、USPを四分類で書き出すこと
  • USPを分解すると、競合と同じ土俵で戦わなくても済む役割分担が見えてくる
  • 役割が決まれば、問い合わせの振り分けや接客にかける工数の配分も自然に整っていく

自社の窓口や商品の役割を、文章にしながら整理していくと、頭の中では分かっていたつもりのことが意外と言葉にできていない、と気づくことがよくあります。この整理だけでも、課題の輪郭は見えてきます。まずは自社の窓口を紙に書き出すところから、ちばりよー。

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#USP#ポジショニング#集客導線

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