閑散期に売る商品はどう作るか
閑散期の予約が減ったとき、多くの事業者がまず値下げを考えます。しかし私は、値下げより先に「その時期にしか売れない商品」を作るべきだと考えています。閑散期は客が少ないだけで、需要そのものが消えているわけではありません。糸満市の観光データを見ても、落ち込む月とじわじわ伸びている月がはっきり分かれています。まず「その時期の客は何を求めているか」を数字で確認し、そこに商品を合わせる。これが繁閑差を埋める順番だと考えています。
なぜ「安売り」ではなく「売る商品」が必要なのか
閑散期対策として一番早いのは値引きです。ただ値引きだけで客を呼ぶと、客単価が下がったまま繁忙期を迎えることになり、利益率が戻りません。私が沖縄観光業の情勢を見るときに使っているOCVB(沖縄観光コンベンションビューロー)の「おきなわ観光地域カルテ」は、毎月5日頃に前々月分のデータが更新されます。2025年6月にこのカルテで糸満市の年間データ(2024年5月〜2025年4月)を確認したところ、11〜1月、特に12月に来訪者が落ち込み、逆に2月は前年比+25.2%と大幅に伸び、4月は前年比-15.4%という月もありました。
つまり「閑散期」とひとくくりにできるほど単純ではなく、月ごとに客層も動きも違います。値下げは全月に同じ効果を出す発想ですが、実際の需要は月によって性格が違うので、月ごとに違う商品を当てるほうが理屈に合います。
沖縄の閑散期は「穴場」に変換できるのか
沖縄の梅雨は5月10日前後に梅雨入りするのが平年並みで、いわゆる長雨型ではなくスコール型(短時間強く降って、すぐ晴れる)です。私はこの気象特性を、ツアー実施可能日が思っているより多い時期だと捉えています。梅雨期は観光客が減る一方で、海の透明度は安定し、価格も下がりやすい。これは客側から見れば「混雑がなく、海はきれいで、価格も抑えられる」穴場シーズンです。
同じ考え方は客層のデータにも当てはまります。私が参照している旅行者インサイト資料では、ひとり旅の割合が15.9%から19.3%に増え、早期予約派(3か月以上前に予約する層)は48.3%を占めていました。閑散期は繁忙期に比べて空きが多く、早期予約の客やひとり旅の客にとっては選びやすい時期です。閑散期を「客が少ない時期」ではなく「特定の客層に選ばれやすい時期」と読み替えると、そこに合う商品の輪郭が見えてきます。
天然水族感ツアーはどう閑散期商品を設計したか
私が経営する天然水族感ツアー(大度海岸・ジョン万ビーチ、糸満市)では、この考え方を梅雨期の訴求に反映させています。梅雨は観光客が減る時期ですが、スコール型気象で実施可能日は多く、透明度は安定し、価格も落ちやすい。ここを「梅雨だから海が濁っている」ではなく「梅雨の海は狙い目」という訴求に切り替えています。値下げではなく、混雑がない・透明度が安定している・早く予約すれば選択肢が広いという情報の出し方です。
もう一つの軸はシニア・三世代層です。糸満市の観光データでは60代シニアの来訪が前年比+25.6%と伸びていました。閑散期は繁忙期に比べて子ども連れやグループの予約が入りにくいぶん、シニア層や三世代のゆったりした旅程が入りやすい時期でもあります。天然水族感ツアーは初心者でも参加しやすく、船を使わず那覇から近い立地なので、閑散期にこの層へ寄せる商品として設計する価値があると考えています。
これらは値下げではなく、時期ごとの客層に商品の見せ方を合わせているという点が共通しています。
今すぐできる一歩
自社のカレンダーを見て、閑散期を一つに丸めず月単位で分けてください。そのうえで、次の3つを自問してみてください。
- この月に来る客は「安いから来る」のか、「他の月より選びやすいから来る」のか
- この月にしか出せない条件(空き・天候・混雑のなさ)は何か
- その条件を、値下げせずに言葉にできるか
沖縄であれば、OCVBのおきなわ観光地域カルテ(areakarte.ocvb.or.jp)で自社エリアの月別データを見るところから始められます。県外の事業者でも、自地域の観光協会や商工会が持つ月別来訪データを同じ手順で読めば、同じ考え方が使えます。
まとめ
- 閑散期対策は値下げより先に「その時期にしか出せない条件」を商品化することが先
- 沖縄の閑散期は月ごとに性格が違う。梅雨はスコール型で実施可能日が多く、糸満市の2月は前年比+25.2%増という月もある
- 天然水族感ツアーは梅雨の透明度・混雑のなさと、伸びているシニア・三世代層に商品の見せ方を合わせている
でーじ悩ましいテーマですが、月単位でデータを見るところから始めれば、閑散期は「捨てる時期」から「選ばれる時期」に変わっていきます。
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