なぜまた来たくなるのか、感情カーブの作り方
結論
リピートと口コミは、才能でも偶然でもなく設計できます。ダイビングや観光の現場でお客様と向き合う中で、また来たくなる人・人に話したくなる人には共通点があります。それは体験の「一番良かった瞬間」がどこにあるかではなく、体験が始まってから終わったあとまでの感情の上がり下がり、つまり「感情カーブ」がどう設計されているかです。感情のピークをどこに置くか、終わり方をどう作るかで、リピート率も口コミの中身も変わります。
なぜそうなのか
人は理屈で比較し、感情で決断し、感情で記憶し、感情で他人に話します。これは現場でお客様と向き合う中で感じてきたことです。お客様は料金表やコース内容を理屈で比較して申し込みますが、実際に「また来よう」「友達に話そう」と決めるのは、体験中に動いた感情のほうです。
しかも人は体験の全部を均等に覚えているわけではありません。一番感情が動いた瞬間と、最後の瞬間の印象が強く残ります。だから、体験の途中でどれだけ良い瞬間があっても、終わり方が雑だと記憶全体が薄まってしまいます。逆に、体験の途中に多少の不安や待ち時間があっても、最後の余韻が良ければ、お客様は全体を「良かった」と記憶します。
これが感情カーブという考え方です。申込前の不安、当日の高揚、体験中の緊張とピーク、終わりの寂しさ、帰宅後の余韻。この線をどこでどう動かすかを、私は現場で意識してきました。
具体例
うちでは、ダイビングツアーの一日を一つの感情カーブとして見ています。
申込の段階では、お客様は必ず不安を抱えています。「初めてで大丈夫か」「海が怖くないか」という不安です。ここで理屈だけで安心材料を並べても、感情は動きません。現場では、この最初の不安をどう受け止めるかが、その後の体験に影響することを何度も見てきました。
当日は、器材を着けて海に入る瞬間に緊張のピークが来ます。ここを乗り越えた直後、海の中で最初に何かを見た瞬間が、感情のもう一つのピークになります。私はこのピークを偶然に任せず、案内する側が意図して作れる場面だと考えています。
そして終わり方です。体験が終わって陸に上がった瞬間、片付けをしながらの会話、帰り際の一言。ここが雑になると、せっかくのピークの記憶まで薄くなってしまいます。私は「最悪を想定し最善を尽くし中庸を行く」を座右の銘にしていますが、終わり方についても同じで、天候が崩れた時、体調を崩された時など、最悪の場面を想定して準備しておくことで、終わり方が崩れないようにしてきました。
これは、お客様・地域・自社・自然の四方よしという私の考え方とも重なります。お客様の感情カーブだけを良くしようとして、地域や自然に負担をかけるやり方は長続きしません。口コミが続いた現場は、この四方のバランスが取れていたと感じています。
今すぐできる一歩
自社の体験や接客の流れを、時系列で紙に書き出してみてください。申込前、来店直後、体験中、終わり際、帰宅後の5つの場面に分けて、それぞれでお客様の感情が上がっているか下がっているかを想像しながら線を引いてみます。多くの場合、体験の途中にはピークがあっても、終わり際で線が急に下がっていることに気づきます。まずはその「終わり際」だけを見直すことから始められます。
まとめ
- リピートと口コミは、感情の上がり下がりを線で捉える「感情カーブ」として設計できる
- 人は体験全部ではなく、一番感情が動いた瞬間と最後の瞬間を強く記憶する
- 終わり方の設計と、お客様・地域・自社・自然の四方よしのバランスが、口コミが続く現場の条件になる
体験の途中がどれだけ良くても、終わり方が整っていなければ記憶は薄まります。まずは自社の感情カーブを一度、紙に書き出すことから始めてみてください。でーじ大事な一歩です。
