自社専用の小さな仕組みはAIで作れるか
結論から言います。自社専用の小さな仕組みは、AIを使えば経営者自身でも形にできます。ただし作れるのは万能のプログラムではなく、情報を整理し、役割分担と判断の基準をはっきりさせる「型」です。私は糸満マリンセンター・シートラベラー・ジョン万パークという三つのサイトを運営する中で、役割が重なり合っていた状態をAIと一緒に整理し直しました。本記事ではその実例をもとに、自社専用の仕組みづくりの進め方をお伝えします。
なぜAIで「自社専用の小さな仕組み」が作れるのか
中小企業が欲しい「システム」の多くは、実は大がかりなプログラムではありません。予約の問い合わせが重なったときにどう案内するか、複数のサイトやSNSのどれに力を入れるか、同じ説明を何度も書き直さずに使い回すにはどうするか、といった「情報の整理」と「判断の基準」です。
これはAIが得意とする領域です。AIは、こちらが持っている資料や過去のやり取りをまとめて読み込み、共通点や重複、抜けを指摘するのが速い。経営者が頭の中だけで考えていたことを、いったん文字にして並べ直してくれます。これまで紙やノートの中にしかなかった判断基準を、誰でも見返せる形にできるというのが、私がAIを使って一番助かっている点です。
ただし、AIが出してくる整理案は、あくまで「叩き台」です。現場の実感と照らし合わせて、使う部分と使わない部分を選ぶのは経営者の仕事です。ここを飛ばして出てきた案をそのまま採用すると、見た目はきれいでも現場で使われない仕組みになります。この順番を間違えないことが、自社専用の仕組みづくりでは一番大事だと感じています。
複数のサイトやSNSを運営していると、「増やすこと」自体は簡単にできてしまいます。新しいページを作る、新しいアカウントを開設する。どれも技術的なハードルは高くありません。問題は、増やした後にそれぞれの役割が曖昧になっていくことです。似たような説明文があちこちに散らばり、お客様はどこを見れば予約にたどり着けるのか分からなくなる。これは私自身が経験したことです。
糸満マリンセンター・シートラベラー・ジョン万パークで起きていたこと
私は沖縄県糸満市のジョン万ビーチ(大度海岸)を拠点に、糸満マリンセンター、シートラベラー、ジョン万パークという三つのサイトを運営しています。もともとは目的ごとに少しずつ役割を分けたつもりでしたが、運営を続けるうちに、どのサイトにも似たような説明が並び、お客様がどこを見れば予約にたどり着けるのか分かりにくい状態になっていました。
二〇二五年十一月、三つのサイトの内容をAIに読み込ませて、それぞれの役割を整理してもらったことがあります。出てきた叩き台では、ジョン万パークは世界観を伝える入口、糸満マリンセンターは幅広いプランを扱う本体、シートラベラーは那覇発のシュノーケリングに特化した窓口、というように役割が分かれていました。
言葉にしてもらうと分かりやすく見えますが、それをそのまま社内の方針にはしませんでした。実際にお客様がどのページから入ってきて、どこで離れているのかを自分たちで見直し、案内文や導線を現場の感覚に合わせて調整する作業が必要でした。AIが出した役割分担は「仮説」であって「答え」ではなかった、ということです。
この整理の過程で分かったのは、「ホームページやお知らせのページに着地した人が、肝心のプランのページまで届かずに離れてしまう」という動きが起きやすいということでした。入口のページだけを立派にしても、そこから先の案内が弱ければ、お客様は迷ったまま離れてしまいます。これは三つのサイトのどこでも起こり得る問題で、サイトの数を増やすほど見落としやすくなると感じました。
もう一つ気づいたのは、季節によってサイトごとの反応が大きく変わるということです。年間を通して同じ力配分で運営するのではなく、閑散期には地元需要や若い層への発信を強める、繁忙期には家族層への案内を手厚くするといった、時期に応じた力の入れどころの見直しが必要だと分かりました。これもAIに三つのサイトの傾向を並べて見せてもらったことで、自分たちだけでは気づきにくかった季節差に目が向いた一例です。
この経験から分かったのは、複数のチャネルを持つ事業者ほど、役割の重複と、訪れた人の迷子が起きやすいということです。サイトを増やすこと自体は簡単ですが、それぞれが何のためにあるのかを一行で言えない状態になっていないか、定期的に見直す必要があります。見返す作業をAIに手伝ってもらうと、自分では気づきにくい重複や、ページ間の導線の弱さに早く気づけます。
AIの提案は「叩き台」。判断は自分でする
天然水族感ツアーの接客では、お客様の気持ちが「不安」から「安心」「ワクワク」「感動」へと動いていく流れを大事にしています。この流れを言葉にして、スタッフ教育の資料や説明文に落とし込む作業にもAIを使っています。現場で積み重ねてきた考え方を「こういう順番で接客している」とAIに伝えると、それを整理した文章やチェックリストの形にしてくれます。
ここでも同じことが言えます。AIが整理した文章は、スタッフ教育の叩き台や、ホームページの説明文の下書きとしては十分に使えます。しかし「本当にこの順番でお客様が安心していくか」「この言葉遣いは現場の雰囲気に合っているか」は、最終的に現場を知っている自分たちで判断するしかありません。AIは情報を整理するのが速い分、現場の温度感までは分かりません。そこを埋めるのが経営者の役目だと考えています。
同じように、一つのネタをブログ記事やSNS投稿、接客トークなど複数の形に書き分ける作業もAIに手伝ってもらっています。ここでも、最初に出てくる文章はあくまで下書きです。沖縄の言葉の混ぜ方や語尾の調子、どこまで砕けた表現にするかは、最後に自分の目で読んで直しています。AIに任せきりにせず、自社の言葉として自分の手で仕上げる一手間を省かないことが、結局は一番の近道だと感じています。
判断を分けるときに私が自分に問うているのは、次の三つです。
- この文章や導線は、実際のお客様の動きと合っているか(AIは過去の資料しか見ていない)
- この言葉遣いは、現場の雰囲気やスタッフの話し方とずれていないか
- この役割分担は、繁忙期と閑散期の両方で成立するか
この三つのどれかに引っかかるときは、AIの叩き台をそのまま使わず、現場の実感を優先して書き直しています。
今すぐできる一歩
自社専用の小さな仕組みを作る最初の一歩は、難しいことではありません。
- 自社が持っている窓口(サイト、SNS、LINE、チラシなど)をすべて書き出す
- それぞれの役割を一行で言葉にしてみる。言葉にできないなら、どこかと重なっている証拠
- お客様がどのページに着地し、どこで離れているかを自分たちの感覚で振り返る
- 書き出した一覧をAIに見せて、重複や抜けを指摘してもらう
- 出てきた指摘をそのまま採用せず、現場の実感と照らして採否を決める
ここまでをまず自分たちだけでやってみると、どこが曖昧になっているかが見えてきます。難しい開発も、高額な外注も、この段階ではまだ必要ありません。
よくある質問
Q. 自社専用の小さなシステムとは、具体的に何を指しますか。 A. ここで言う「システム」は、複雑なプログラムではなく、情報の整理・役割分担・判断の基準をまとめた「型」を指します。予約の案内文、サイトの役割分担、接客の順番なども、整えれば立派な自社専用の仕組みになります。
Q. AIに複数のサイトの役割を整理させれば、そのまま使えますか。 A. 叩き台にはなりますが、そのまま使うのはおすすめしません。私たちの場合も、AIが出した役割分担をもとに、実際の訪問の流れと照らし合わせて手直しをしました。現場の判断を一度通すことが欠かせません。
Q. サイトやチャネルを増やすと何が起きやすいですか。 A. 同じ説明の重複と、訪れた人がどこで予約すればいいか分からなくなる「迷子」が起きやすくなります。増やすこと自体より、それぞれの役割を言葉にできているかを定期的に確認することが大切です。
Q. 季節によって力の入れどころを変える必要はありますか。 A. あると考えています。私たちの場合も、閑散期と繁忙期でサイトごとの反応に差が出ることが分かり、時期に応じて発信の重みを変える必要があると気づきました。年間を通して同じやり方を続けるのではなく、時期ごとに見直す姿勢が必要です。
Q. 一人でも始められますか。 A. はい。まずは自社の窓口を書き出して役割を一行で言ってみるところから始められます。そのうえで、AIに整理を手伝ってもらい、最終判断は自分で行う、という流れであれば一人からでも進められます。
まとめ
- 自社専用の小さな仕組みはAIで作れるが、作れるのは判断の型であって万能のプログラムではない
- 複数のチャネルを持つほど、役割の重複と訪れた人の迷子が起きやすく、季節による反応の差にも目を向ける必要がある
- AIの提案は叩き台として受け取り、採否は現場の判断で決める
一人で抱え込まず、まずは自社の窓口を書き出すところから始めてみてください。仕事の流れをどこから整理すればいいか分からないときは、三十分の相談からでも構いません。でーじ悩むくらいなら、一度声に出して整理してみると、見えてくるものがあります。ちばりよー。
